2020年2月21日に日本円は対ドルに対して112.4円まで急上昇を見せました。
2019年の為替相場が107円から112円のレンジで動いたため、ちょうどこの辺りが天井になるのではないかと思いますが、なぜこのような動きを見せたのか?また、今後まだ円安が続くの可能性があるのか?
紹介します。
日本円が安全通貨の機能を終える?
まず、2020年2月21日時点での、市場というのは、「リスクオン」なのか?「リスクオフ」なのか?というのは、まず安全資産の代表例である「金(ゴールド)」を見れば分かります。
以下が金(ゴールド)のチャートですが、見ていただければ分かる通り、右肩上がりに伸びている事が分かります。この状況から「リスクオフ」の状況である事がよく分かります。
そんな中、安全資産と言われてきた、日本円は、なぜかリスクオンの動きを見せています。
20日の欧米株価は、軒並み下落しており、通常はドルやユーロが売られる動きをするところですが、以下の添付ファイルの通り日本円がもっとも売られる状況となっています。
この結果から、日本円が以前のように「安全通貨」のような動きをしなくなったと認識し始めている可能性があります。
おそらく実際の動きとしては、国内投資家が110円は超えることはないと考えていたため、大量のショートポジションを持っていたものの、110.3円を上抜けしたあたりで、短期筋がドル円のショートポジションを損切りし、一気に120円まで上抜けしたというのが、今回のストーリになるのではないでしょうか。
いつから日本円は安全通貨なのか?
安全通貨としての動きというのは、2005年ごろから始まりました。
ちょうど日本が、低金利政策を始めたのが、2000年ごろなので、このあたりから日本は、安全資産と言われてきたのです。
その安全通貨としての立場の確立は、ファンディング通貨として日本円が使われるようになったからです。
ファンディング通貨とは、低金利の通貨で資金調達し、高金利通貨で運用を行うキャリトレード(*1)において、資金を調達する側の通貨のことです。
今までは、低金利の通貨である日本円がファンディング通貨としての機能を果たしていました。そのため、リスクオンの時は、世界の投資家は、低金利である日本円で資金調達し、日本円を売って、高金利の外貨を買うキャリートレードを行なっていました。
そして、リスクオンの時に、高金利通貨を売って、円を買い戻す動きをしています。
そのため、日本円は「安全通貨」と呼ばれていました。
(*1)キャリートレードとは、資金調達コストを上回る運用収益が安定的に得られるトレードのことです。
例えば、不動産投資などで、銀行から資金調達し、不動産を購入する事で、銀行へのローン返済よりも不動産の収益の方が大きいので、成り立っている投資手法ですが、このような借り入れよりも収益が多い投資運用を、キャリートレードと言います。
しかし、最近は海外投資家が、今回のように「リスクオン」でも「リスクオフ」でも適切な動きがされなくなってしまいました。
その理由は、2016年以降欧州中銀の金利利下げに伴い、円よりもユーロの金利の方が明確に低くなったため、ファンディング通貨としてユーロを採用するようになった事が要因です。
もしかすると、2020年2月の動きが、今後決定的な安全通貨としての地位を揺るがしたきっかけとなる月として後々振り返る可能性がありますね。
さいごに
もちろん、今回のようなリスクオフ時に、日本円が買われなくなった理由は他にもあります。
例えば、「コロナウイルス」「GDP成長率-6.3%」などの要因です。
確かに、安全資産の通貨を買おうと思っても、コロナウイルスや成長率が全く望めないのであれば、逆にリスクがあるとして買われない可能性は十分あります。
そのため、今回の一例だけで、安全資産の立場を追われると判断するのは、少し早合点の可能性がありますが、そのきっかけとなる可能性がある事象ですので、ぜひ頭に入れておく必要があります。
そして、コロナウイルスが終息し出した時に、海外投資家や国内投資家が、日本円に対してどういう動きを見せるか、しっかり見極めていく必要があります。
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