どうもトラエンです。
最近新しく始めたビジネスに夢中で全く結果が出ていないものの最初はこんなものだと言い聞かせ、まずは1年頑張ってみようと思っています。
本記事は、失われた30年と言われる日本経済低迷の理由について、記載してみようと思います。
日本経済低迷の理由は、多くの要因が言われています。例えば、
「企業が生産拠点を海外に移管して雇用が失われた」
「長期に渡るデフレ、もしくは低インフレが原因」
「構造改革、規制緩和が中途半端」
「企業が現場力に頼り過ぎてシステム化・デジタル化が遅れた」
等のような理由は、誰もが耳にしたことがあるのではないでしょうか。
ということで、トラエンも簡単に考察してみようと思います。
GDPの内訳
日本という国は「輸出大国」と言われますが、本当にそうなのでしょうか?
少なくとも日本は、中国、アメリカ、ドイツに次ぐ世界第4位の「貿易大国」であることは間違いありません。
しかし、GDPが輸出に依存しているかといえば「違う」となります。
以下は日本のGDPの内訳です。
(出所 統計局「日本の統計2020」より筆者作成)
円グラフを見ると分かりますが、日本のGDPの半分超は民間最終消費、すなわち「家計」が占めています。そして、2割を政府支出、2割弱を民間総固定資本形成(企業設備投資、住宅投資)が占めています。
GDPにおいては「財貨・サービスの純輸出」は1%もありません(0.1%)。
輸出入の総額はGDPには計上されません。
計上されるのは、輸出から輸入を差し引いた「純輸出」です。
日本は、貿易大国ではありますが、少なくともGDPという観点では輸出大国ではありません。言葉を換えて言えば、輸出で稼いでいる国ではありません。
まぁ、普通に考えて、周りを見渡しても、ほとんどの人が英語も話せないのに、どうやって輸出で稼いでいるんだという感覚に陥りますよね(笑)
日本は、GDPの半分強を家計、すなわち個人消費が稼ぎ出す、内需型の国です。
しかし、GDPの内訳では輸出の影響が少ないことは分かったが、「取引の大きさ」という観点では、やはり日本は輸出立国であるのではないかと考える方もいらっしゃるでしょう。
統計局の「世界の統計2020」によれば、日本は輸出依存度(GDP対比の輸出総額の割合)が14.4%となっています。
一方で、日本と対比されることが多いドイツは39.2%となります。
また、輸出経済と言われる韓国は35.3%です。一方、内需型経済と言われる米国は輸出依存度が7.9%です。
このように、日本の輸出依存度は他国と比べると相対的に高くはない水準にあり、少なくとも輸出で稼いでいる国ではないことが分かるでしょう。
可処分所得の推移
全章で調べた通り、自動車輸出などで、日本は生きながらえているという都市伝説は、やはり事実と少し違うことが分かりますよね。
やっぱり、日本は、先進国の中でも1億人以上の人口がいる、特殊な国であり、内需型の国だということが分かったと思います。
という事は、個人消費が盛り上がらない限りは、経済は上向きになりません。
もちろん政府支出を増やすことで経済を拡大することもできますが、GDP対比で最悪レベルの債務を抱える日本においては、これ以上の拡大は難しいでしょう。
日本経済浮上の鍵は個人消費が握っているのです。
この個人消費を裏付けるのは、やはり個人の所得です。
アベノミクスの経済・金融政策(実際にはほとんど金融政策だけだったように思います)で個人の所得は徐々にではありますが上昇してきました。
しかし、個人の消費が増えたという実感がある方はわずかでしょう。
実際、私自身も、大盤振る舞いする事が増えたかと言われると、あまりそんなに増えていないというのが実態です・・・。
その理由は、個人の可処分所得の推移を見れば分かります。
「可処分所得」とは、給料等の所得から、税金と社会保険料を控除し、社会保障による現金給付額を加えたものをいいます。留意すべきは、社会保障による現金給付額(児童手当等)を含んでいる点ですので、いわゆる給与の手取額とは異なります。厚生労働省の「所得再分配調査」からのデータとなります。
(出所 厚生労働省「所得再分配調査」より筆者作成)
厚生労働省の調査データは調査対象世帯の状況によっては偏りが発生する可能性はあります(標本数が少ないため)が、全体的な動向を見る上での参考となるものと思います。
上記グラフは世帯主が29歳以下である世帯の可処分所得の推移です。
ピークだった1996年の29歳以下世帯と、ボトムの2014年の29歳以下世帯とでは、可処分所得で大きな差があることが分かります。
2014年と1996年には18年の差があります。少し大げさかもしれませんが、今の29歳以下の世帯主がいる世帯と比べて「親の世代」は可処分所得が年間で数十万円違っているのです。これでは、消費が盛り上がらないでしょう。
それでも2017年の調査では可処分所得が増加しています。この要因は様々でしょうが、新卒の初任給が上昇している等、若手の給料が上昇していることが一部分は関係しているかもしれません。
次に時系列として比較可能な他の年代の可処分所得についても見ていきましょう。以下は可処分所得の推移です。
ちなみに、可処分所得とは、給料の総支給額から税金や社会保険料などを差し引いた手取りの部分のことです。
(出所 厚生労働省「所得再分配調査」より筆者作成)
いずれの世代も2002年と比べると可処分所得は減少しています。
それでも、2017年にほとんどの世代が上昇に転じていますが、これは何故でしょうか?「給与が上昇した」からでしょうか?
その理由は、以下のグラフを見てください。
(出所 厚生労働省「所得再分配調査」より筆者作成)
これは厚生労働省の調査において、各世帯の「有業者数」すなわち「各世帯で何人が仕事をしているか」のグラフです。特に2017年に有業者数が増加しているのが見て取れます。厚生労働省の所得再配分調査は「世帯」の調査です。世帯で働いている人の数が増えれば、当然収入も、可処分所得も増加するでしょう。
そこで、この有業者数を加味した修正可処分所得を簡易的に算出しグラフ化してみます。
(出所 厚生労働省「所得再分配調査」より筆者作成)
このグラフは有業者数を反映した可処分所得の推移です。但し、データの算出方法としては粗く、前掲の可処分所得推移のデータを有業者数で除算(割り算)しているだけです。これにより世帯当たりではなく「一人当たりの可処分所得」の推移を簡易的に算出しています。(但し、留意すべきはこの計算方法では世帯の有業者は誰もが同じ所得を得ていることになります)
このグラフで分かるのは、一人当たりの可処分所得は全般的には右肩下がりの傾向だということです。
これは年金保険料、健康保険料等の社会保険料の増加=可処分所得の減少要因が大きいと思われます。
また、近年は、妻がパートで働くというだけではなく、「夫婦とも正社員」の共働きが当たり前になってきた時代です。いわゆる「女性の働き方」が変わってきた時代であり、世帯の構成員である女性の所得増によって可処分所得は増加してきているはずですが、一人当たり可処分所得の増加は「弱い」のです。やはり、社会保険料の増加要因が大きいと想定されます。
さいごに
トラエン的には、日本経済の低迷について「個人消費が増加しないことが要因であり、その要因は可処分所得の減少にある」と考えています。
この可処分所得の減少は、税金の増加よりも社会保険料の増加によってもたらされています。
以下は社会保障給付費の推移です。
昔よりも、相当増えている事が分かりますよね。
(出所 厚労省Webサイト)
基本的に世代間の仕送り方式である社会保障給付費用は、1990年には47兆円でしたが、2020年は126兆円程度まで増加しています。現役世代の負担が増加していることは言うまでもありません。
そして、今の制度のままでいけば少子高齢化の進展により社会保障給付費用は更に増加し、現役世代一人当たりの負担も増加します(年金のみならず、特に医療・介護が増加します)。
ここに個人消費が盛り上がらない要因があります。
老後不安によって現役世代は更に貯蓄率を上げ、消費を減らしていくでしょう。そして、健康保険料の増加のような社会保険料の増加等によって、更に消費に回すことのできる可処分所得は減少していくのです。
これが日本経済が低迷してきた主要な要因であり、個人消費をどのように引き上げていくかが、日本の経済政策における最大の課題となって良いはず、と筆者は考えています。
他の経済施策は、経済成長という観点では枝葉です。個人消費を増加させるために何ができるのか、政治にも考えて欲しいと思います(もちろん経済成長をさせたいという意思があることが前提ですが)。
尚、厚生労働省の所得再分配調査は令和2年分の実施がコロナの影響で見送られました。再分配調査は個人の消費動向の解明に役立つのではないかと筆者は考えており、早急な実施を期待しています。
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