イランとアメリカの関係が非常に焦げ付いている中、やはり忘れてはいけないのは、中国の存在です。
そして、過去の経緯から中国とイランが急激に接近しているということが分かりますので、紹介します。
ロシア・中国・イランの「大規模軍事演習」!?
2020年1月3日にあったイラン司令官殺害については、アメリカとイランの衝突の枠組みにしか目がいきませんが、もう少し広い視野で国際情勢を見ると、アメリカと中国の覇権争いと密接に絡んでいることが見えてきます。
そこで重要なポイントが、イランと中国の関係性です。
2019年12月末に、イランのホルムズ海峡東側のオマーン湾に、中国・ロシア・イランの海軍が集結して「海洋の安全帯」と称する4日間の大規模海軍演習を行なっていました。
ホルムズ海峡といえば、2019年に通過する船舶に対するイランからの攻撃が以下の通り相次いだ場所です。
・2019年5月 サウジアラビアのタンカー4隻
・2019年6月 日本のタンカーを含む2隻
・2019年7月 イギリスのタンカー拿捕(だほ)
ちなみに、ホルムズ海峡は、ペルシャ湾で産出された石油を1日1700万バレル(約27億リットル)もタンカーが運び出す重要な搬出路です。日本のタンカーの8割はココを通ってきていますので、世界各国がこの小さな海峡に注目する理由が分かりますね。
そんなイランが目を光らせるホルムズ海峡に、中国とロシアが加わっての大規模海軍演習が行われたという事は、間違いなく、イランと中国の距離が近くなっている事が読み取れます。
もちろん、アメリカも黙っているわけではなく、2020年1月末からホルムズ海峡周辺で船舶保護の任務を本格化させると言っていますので、中国・イランの組み合わせへの牽制である事がよく分かります。
イラン外相と中国政府の会談
イランは、アメリカから経済制裁を受けているため、頼る相手がおらず、かなりストレスフルな状態です。
イランの外相は、2019年12月31日に4度目となる訪中をし、北京で王毅外相と会談していました。
その会談後、王外相は以下の通り米国を名指しで批判するコメントしています。
「イラン情勢は深刻な情勢に直面している。米国が一方的に核合意から脱退して、イランに極限的な圧力をかけている。これこそが最近のイラン情勢が緊張している根源なのだ。」
また、アメリカによるソレイマニ司令官殺害に関する中国政府の反応も、以下コメントの通りイラン寄りの攻撃的なものでした。
「米国による軍事的暴挙は地域の緊張と混乱を加速させている。我々は米国に対して武力の乱用をしないことを求める」
この発言からも、イランと中国の密接な関係が伺えます。
イランと中国の関係は長年続いている
もちろん理解している人は多いと思いますが、イランと中国の関係は、最近に始まった関係ではありません。
1979年のイラン革命の後、中国は兵器供給や原油取引を通して、イランに対する影響力を強めてきました。
さらに、イランで一番問題視されている原子力発電・ウラン濃縮施設の技術、またウランそのものの提供も中国から提供されているものと噂されています。
そのため、この数十年、イランの背後には常に中国の影があるのです。
アメリカも、もちろん理解しているため、オバマ元大統領時代の2010年4月に胡錦濤国家主席と会談した際に、中国がイランの核問題について国家安全保障理事会で拒否権を行使しない事を求めています。
国家安全保障理事会では、1国でも拒否権を行使すると、決定事項が有効とならないため、一番怪しい中国にアメリカが釘を刺したんですね。
さいごに
2019年12月〜2020年1月の間に、中国はイランに歩み寄り、イランはアメリカを攻撃、そして、アメリカはイランを攻撃するという一連の流れが読み取れます。
確かに、1月15日にアメリカと中国は「第一段階の合意」が結ばれ、世界経済は一時的にリスクオンの流れになりました。
しかし、この「第一段階の合意」は、あくまで互いに合意しやすい範囲での合意であり、これからが本格的な協議が必要な範囲ですので、これからまたリスクオフの流れになる可能性は高いです。
そして、2020年1月20日からカナダで行われているファーウェイのNo.2である孟晩舟(もう ばんしゅう)氏のアメリカへ身柄引き渡しに関する裁判が始まっています。
この裁判の結果も米中問題に関わってくるため、要注意ですね。
まさに、アメリカと中国の争いが、世界各国で行われていると言った感じです。
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